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2025.12.01

補聴器のお話

【補聴器相談医が徹底解説】補聴器に関するよくある質問(FAQ)

「相談する場所がわからない」、「購入するための準備が何かあるのかわからない」、「購入してから調子が悪くなったらどうしたらいいかわからない」…。補聴器に対して、様々なご不安がたくさんあると思います。

そこで、当院の補聴器外来に来院された方からも伺うことのある、補聴器に関するよくある質問(FAQ)を補聴器相談医の視点から詳しく説明します。ご自身や大切な家族の聴こえを守るために、ぜひ最後までお読みください。

■補聴器外来への来院前のFAQ

  • どれくらい聞こえが悪かったら相談すればよいですか?

こちらはよく質問をいただくのですが、明確なものはありません。推奨されている聴力は平均聴力が40dB以上(日常会話が聞き取りにくいレベル)ですが、それよりも軽度の症状の方も補聴器装用を希望する場合もあります。まずはご自身の状況を把握するために検査をしてみることをおすすめしております。

 

  • どのくらい通院しなければならないのでしょうか?

細かな調整が必要なため、平均5回程の来院が必要となるケースが多いです。人によっては3回程で、日常生活の使用に問題がない程調整できるケースもありますが、そのような方でも1~2か月に1度は調整・メンテナンスのためにご来院いただいております。

 

  • 補聴器の貸出がありますか?それともすぐに購入が必要でしょうか?

試聴器を貸し出ししておりますので、すぐにご購入いただく必要はありません。当院の補聴器外来では、補聴器の販売が目的ではなく、聴こえの改善を目的としています。日常生活の中でお貸出しする試聴器を利用していただき、補聴器の付け心地や聴こえの変化を感じていただいた上で、必要である方に補聴器選定のアドバイスをさせていただいております。

■補聴器購入前のFAQ

  • 本当に補聴器が必要でしょうか?

患者さん自身にご判断いただくため、本当に必要かは当院では判断しておりません。検査・診断を基に、ご試聴いただき、患者さん自身が必要と判断した場合にのみ補聴器のご案内をさせていただきます。

 

  • 1日のうちどのくらいの時間、補聴器は付けておく必要がありますか?

できるだけ長時間装着いただく方がよいと考えておりますが、負担が大きい場合もありますので、まずは付けることに慣れていくために最低限1日3~4時間程から装用を始めて、徐々に装用時間を延ばすように意識していただくのが良いでしょう。

 

  • 補聴器の寿命・買い替え時期はどのくらい?毎日充電しなければならないですか?

補聴器の寿命・買い替え時期は使用頻度にもよりますが、5年程で買い替えを検討いただくのが良いでしょう。また、充電の頻度は補聴器によって変わります。補聴器には、充電タイプと電池タイプがあります。充電タイプは1回の充電(3~4時間)で24時間以上使用可能なモデルがほとんどです。そのため、ご就寝前に充電するようにしていただくのがおすすめです。電池タイプは1~2週間使用可能です。

■補聴器購入後のFAQ

  • 買ったものの、必要を感じません。返品・交換は可能でしょうか?

これは補聴器販売店で購入している方に多くあるトラブルです。販売店によるため、返品・交換についてはお答えしかねますが、当院ではそうしたご相談が無いように、試聴器を貸し出し、患者さんに2~3ヶ月かけて納得できるまで試していただきます。そこで必要な方のみに購入のご案内をしておりますので、ご安心ください。

 

  • 耳に合わない場合、どうすればよいでしょうか?

誰でも装着できる補聴器は存在しません。補聴器には、聴こえの調整はもちろん、個々の耳に合う形に補聴器を調整する必要があります。また、下記のコラムでもご紹介いたしましたが、「補聴器だと思ったが、集音器だった」ということもこの事例では多くあります。補聴器の選定には、専門的な知識と十分な診断が必要です。

(URL:https://www.abe-jibika.jp/hotyoki_media/vol-6/

 

  • 雑音が大きく、常時つけることができません。どうすればよいでしょうか?

当院の補聴器外来であれば、そうした細かな調整が可能です。補聴器の最大の特徴は、個別調整力にあり、小さな声や車が後ろから来ている音など、患者さん自身が聞き取りにくいと感じている「本当に聞きたい音」だけを大きくすることができます。そのためには、自覚症状を細かくヒアリングした上で、その症状を基に補聴器の調整ができる専門知識が必要です。街の補聴器販売店にご相談いただくよりも、補聴器専門医のいる耳鼻咽喉科医院にご相談いただく方が、安心して補聴器の装用を続けることができます。

■まとめ

補聴器は、購入する前に、まず補聴器とはどういったものなのか、ご自身が今どういった音が聞きづらくなっているかを知り、慎重に選ぶことがとても重要です。そのため、当院の補聴器外来では、聴力検査を行った上で、補聴器が必要と専門医が判断した場合に、試聴器を貸し出しし、実際の生活の中で試していただくことから始めています。試聴器の貸出は、患者さん自身にとって、補聴器が必要かどうかを判断いただくために非常に大切な工程だと考えております。

補聴器に関心がある方やご家族で最近聞こえが悪いと感じる方がいらっしゃる場合、まずはご相談いただくことから始めませんか?ご希望がある場合は、一度当院にご来院ください。

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【監修】北海道札幌市 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック 院長 安部裕介

■資格:医学博士/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医/日本アレルギー学会専門医/補聴器相談医/騒音性難聴担当医

■所属学会:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/日本アレルギー学会/耳鼻咽喉科臨床学会/日本めまい平衡医学会/日本聴覚医学会

専門性の高い人工内耳や頭頸部癌の手術治療から難治性の耳鳴外来、認知症予防の見地からも再認識されている補聴器外来などの経験を積み、そこで得た知見を活かし、質の高い医療を提供し、安心で豊かな生活をサポートしている。

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