Column

2025.10.01

補聴器のお話

【補聴器相談医が徹底解説】 難聴の種類別の原因と治療法

難聴症状は一部の場合を除き、徐々に進行していくことが多く、自覚したときには進行が進んでしまっている場合もあります。また全てに補聴器装用により改善できるものではなく、そのほかの治療を行う必要があるものがあります。

そこで今回は、「そもそも補聴器が必要なのかわからない」「自分の聴こえの悪さがなぜ起こっているか知りたい」そのような思いがあるご本人やそのご家族に向けて、難聴症状の種類と原因、治療法について補聴器相談医の視点から詳しく解説します。ご自身や大切な家族の聴こえを守るために、ぜひ最後までお読みください。

1.聴こえの仕組みと難聴の種類

<対象となる耳の構造>

耳は大きく3つの部分から構成されています。

・外耳:音を集めて中耳へ伝える役割

・中耳:鼓膜と耳小骨を通じて振動を増幅し内耳へ伝える役割

・内耳:蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる部分が聴覚情報を脳へ送る役割

<難聴の種類>

難聴は原因と場所によって次の3つに分類されます。

・感音性難聴:内耳や聴神経の障害が原因となり、聴覚細胞や聴神経の損傷することで起こることが多い難聴症状です。騒音性難聴、突発性難聴、加齢による難聴がこれにあたります。突発性難聴は突然の聴力低下を伴うことが多く、早期の治療が重要です。

・伝音性難聴:外耳や中耳の障害が原因で、耳垢栓塞、中耳炎、耳硬化症などがこれにあたります。比較的治癒しやすい症状が多いですが、感音性難聴と同じく早期発見が重要です。

・混合性難聴:感音性と伝音性の両方の要素が絡む複合難聴症状です。特に高齢者や複数のリスク要因がある場合によくみられます。

 

2.耳鼻科で行う難聴種類別の治療法

  • 症状問わず、共通する重要ポイント

治療の前に、最も重要なポイントは正確な診断のための検査です。

なぜ難聴症状が出ているのか、を判断するために以下の診察・検査を行います。

<診察・検査>

・耳内の診察:外耳や中耳の状態を観察し、聴こえに影響している耳垢がある場合は除去します。

・聞き取り(問診):症状の経過や影響範囲を確認します。

・聴力検査:どの程度聴こえにくいかを測定します。

また、耳鳴り症状があれば、耳鳴の有無や程度を確認し、めまい症状があれば、めまい検査を行います。

当院ではv-HIT検査という専用のゴーグルを装着して行う検査も実施しています。

短時間で負担が少なく、原因の早期究明ができる検査方法です。

<治療法>

難聴の治療法は、薬物療法(ステロイドなど)が基本です。伝音性難聴の場合、原因である、耳垢の詰まり(耳垢栓塞)や中耳炎の治療を行うことで難聴の改善を目指します。

検査を行い、感音性難聴の症状と診断した上で必要な場合は、補聴器の装用を提案します。適切なフィッティングと調整により、日常生活の質の向上を図ることができます。

当院の補聴器外来では、補聴器相談医や聴こえの専門家である言語聴覚士が、試聴時の聴こえの状態や耳の状態を詳細に把握し、それに基づいて最適な補聴器をご提案しています。ご希望がある場合は、一度当院にご来院ください。

 

3.日常生活でできる難聴症状の予防・対策方法

難聴にならないためには、生活習慣の改善が効果的といわれています。具体的には次の通りです。

・良質な睡眠:脳や耳の健康維持を行うため、十分な休息をとることが難聴予防に繋がります。

・ストレス管理:ストレスは血行不良や免疫力低下につながり、難聴のリスクが高まります。適度な運動やリラックスした生活を心がけましょう。

・騒音を避ける:長時間大きな音に曝露されると、感音性難聴のリスクが増加します。イヤホンやヘッドホンの音量設定には気をつけましょう。

 

4.まとめ

難聴は適切な診断と治療、そして日常生活の工夫によって予防・改善が可能です。

難聴症状の治療は、「早期発見・早期治療」が最も重要です。「最近テレビの音量が大きいと家族に言われる」「会話している時に聞き返すことが増えた気がする」「耳鳴りが定期的に聞こえて聴こえが悪い」といった様々な難聴症状に家族や周りが気付くが重要です。ご家族の異変に気付いてあげる意識と、ご自分で気付くための定期的な聴力検査が重要です。

耳の健康を維持し、気になる症状があれば早めに耳鼻科専門医に相談しましょう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【監修】北海道札幌市 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック 院長 安部裕介

■資格:医学博士/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医/日本アレルギー学会専門医/補聴器相談医/騒音性難聴担当医

■所属学会:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/日本アレルギー学会/耳鼻咽喉科臨床学会/日本めまい平衡医学会/日本聴覚医学会

専門性の高い人工内耳や頭頸部癌の手術治療から難治性の耳鳴外来、認知症予防の見地からも再認識されている補聴器外来などの経験を積み、そこで得た知見を活かし、質の高い医療を提供し、安心で豊かな生活をサポートしている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――