豆知識

「めまい」のお話

もし皆さんが「めまい」を感じたら何科の受診を考えるでしょうか?

耳鼻咽喉科がめまいの診察を行っていることは意外と知られていないのですが、実は「耳」が原因のめまいも少なくないのです。

 

一言で「めまい」と言っても、グルグル回る、フワーっとする、フラフラする、クラクラする、揺れるような感じ、など症状は多様でその原因も様々です。病気ではなく加齢によるものもありますが、脳出血、脳梗塞など脳の病気、ある種の不整脈などに伴っておきるめまいの中には、命に関わる場合もあるので注意が必要です。この場合はCTやMRI、心電図などの検査が必要となる事もあります。

 

さて、それでは「耳」が原因のめまいのお話をしましょう。耳の奥の骨の中に内耳というところがあって、音を感じる働きをしているのですが、実は、身体のバランス=平衡感覚にも関わっています。この内耳からの情報の他に、目からの情報、身体からの情報を脳で集め、自分が実際に立っている位置を認識するわけですが、いずれかに問題があり情報が不足したりすると実際の位置との”ズレ”が生じ、めまいを感じます。

 

例えば、なでしこジャパンの澤選手が罹患して有名になったのが、「良性発作性頭位めまい症」です。内耳の三半規管が関係する良性のめまいです。寝返りをうった時、起き上がった時など、体位を変えた時にめまいが生じます。耳石というものが三半規管の中で移動したり、ズレたりすることが原因なのですが、サッカーのヘディングなどで頭をぶつけたとき、

長期の入院など同じ姿勢が続いた時などにおきることが多いとされます。治療は、左右に3つずつある三半規管の中で、どの三半規管が問題なのか見極め、移動したり、ズレた耳石を元に戻す運動や体操が主体となります。うまくいけば1回の運動で治る場合もありますが、問題となる三半規管によっては、時間がかかることもあり、病状にあった家庭でできる体操を教え、内服のめまいを抑える薬を補助的に服用することで、徐々に症状が楽になる場合もあります。

 

「メニエール病」も聞いたことが多いのではないでしょうか?めまい=メニエール病のように使われる傾向もありますが、耳が原因のめまいのすべてが「メニエール病」ではありません。何度も繰り返すめまいが特徴で、耳がつまった感じがしたり、聞こえが低下したり、耳鳴りを伴うこともあります。内耳の水ぶくれが原因と考えられています。治療方法は、水ぶくれを軽減する薬、めまいを抑える薬、一時的にステロイドなどのホルモン剤を使う場合もあります。「2リットル程度の水分を摂取することがいい」との報告もありますが、医師に相談してから試みるのがいいでしょう。突然聞こえが悪くなる「突発性難聴」もめまいを伴うことがあり、初回の発作は「メニエール病」と似ている場合があります。「突発性難聴」は早期の治療が重要となるため注意が必要です。

 

風邪などの上気道症状に引き続き、めまいが生じる場合は「前庭神経炎」のことがあります。聞こえの変化や耳鳴りは生じませんが、めまいが長引くことも多く、入院治療を要する場合もあります。治療はめまいを抑える薬が主体となりますが、めまいのリハビリなども症状の早期改善に役立つ場合もあります。

 

耳鼻咽喉科では、眼の動きを特殊な眼鏡などを用いて細かく観察し、場合によっては聴力の状態を調べ、耳が原因のめまいかどうかを診断して治療を行います。急性期のひどいめまいで、激しい頭痛や麻痺を伴う場合、脈の不整や意識を失うことを伴う場合は、まずCT、MRI、心電図などで、命にかかわる脳や心臓の病気がないか見極めることが重要ですが、長引くめまいでお悩みの方、耳のつまる感じや聞こえの低下、耳鳴りなどを伴う方は、ぜひ1度、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。

 

札幌市東区 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック 院長 安部 裕介

 

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