豆知識

「急性中耳炎」のお話

■中耳炎とは

耳の中は、外耳、中耳、内耳の3つに分けられています。中耳は鼓膜の内側で、外から入ってきた音の振動を内耳、聴神経に伝える役割を果たしています。この中耳に細菌やウイルスなどが入り、炎症が起こることで発症するのが中耳炎です。

中耳炎は主に3つの種類に分かれます。

・急性中耳炎~耳の痛みや発熱、耳漏(みみだれ)などがある。

・滲出性中耳炎~滲出液と呼ばれる分泌液が鼓膜の裏側に溜まるとなる

・慢性中耳炎 ~鼓膜に穴が開き、耳漏を繰り返し、難聴の原因となる。

 

【急性中耳炎の症状と原因】

急性中耳炎は、細菌や風邪などのウイルスが、耳管という管を介して鼻の奥から中耳に移動することで発症します。原因となる細菌の種類は、肺炎球菌・インフルエンザ菌・モラクセラ菌などが多く、3歳以下の子どものほとんどがかかり、細菌やウイルスに対する免疫が未熟な3歳以下では、繰り返すことも多いと言われています。成人でも発症することがあり、飛行機に乗った時に耳の痛みがある場合は、急性中耳炎の一種である、航空性中耳炎の場合があります。特に風邪をひいている時は、中耳炎の注意が必要です。

急性中耳炎の症状は耳の痛みや発熱が主ですが、耳漏(みみだれ)や難聴、極めて稀にめまいなどを発症することもあります。症状を訴えられない乳児や小さいお子さんの場合、泣いたり不機嫌になったり、発熱だけが症状のことがありますので、風邪をひいた際の様子に注意していただきたいと思います。

 

【急性中耳炎の治療法】

急性中耳炎の治療は、多くが細菌による感染が原因ですので、抗菌剤の服用をすることが基本となります。最近、抗菌剤が効かない耐性菌の出現が問題となっており、飲みやすさではなく、病状にあった適切な抗菌剤の選択が重要で、耳鼻咽喉科専門医の正確な診断と治療を受けることがお薦めです。

中耳炎のごく初期、発熱・耳の痛みの症状が強い場合は、解熱鎮痛剤を処方することもあります。鼓膜の腫脹や耳の痛みが強い場合、耳漏(みみだれ)がある場合、高熱のある場合は、鼓膜を切開し、中耳の膿を排出する処置(鼓膜切開術)をする場合もあります。鼻から細菌やウイルスが中耳に移動することが原因ですので、鼻の処置、吸引なども重要になります。医師の指示に従い、薬の服用をきちんと守っていただければ、数日で症状は治ることが多いですが、聞こえの悪い状態が持続する、滲出性中耳炎に移行することも多く、経過をみることが大切です。

【ご注意いただくこと】~プールや入浴

中耳炎の治療中でも、入浴は可能ですし、抗菌剤の内服中以外は、プールも問題ありません。プールやお風呂で耳に水が入ることが原因で中耳炎になることありませんが、鼓膜に穴がある慢性中耳炎、鼓膜切開を行った場合は、耳に水が入らないような工夫が必要となります。

発熱などの症状がある急性中耳炎以外では、予防接種などを受けることもできます。

中耳炎で最も気を付けていただきたいことは鼻をすすることです。鼻水をすすることで鼻水に付着している細菌やウイルスが、耳管を介して、中耳に移動してしまうことがあります。滲出性中耳炎のリスクとも言われていますので、可能なら鼻をかんで細菌やウイルスを外に出すことが大切です。1人で鼻をかむことができない小さなお子さんの場合は、耳鼻咽喉科で鼻水の吸引をすることで、中耳炎発症のリスクを減らすことができます。

熱がある、突然耳が聞こえにくくなった、耳に痛みを感じる、耳がつまる感じがするなどの症状を感じたら、中耳炎の可能性がありますので症状が悪化しないうちに耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。

 

☆コラム : 子どもに中耳炎が多い理由

中耳炎は子どもに多い病気というイメージを持たれている方も多いかと思います。成人の方でも、飛行機に乗った後などの航空性中耳炎、子どもと同じく風邪など引いた後に中耳炎になることもあります。子どもが中耳炎になりやすい理由は、中耳と鼻をつなぐ耳管が大人より短く太いため、風邪を引いた際に、鼻の奥で繁殖したウイルス・細菌が、耳管を通して中耳に移行しやすいからと考えられています。2〜3歳までは免疫が未熟で成長過程にあるため、反復、繰り返しやすいのですが、その背景に、集団保育(中耳炎には不利になります)や、ミルク栄養(母乳栄養は免疫的に優れていると言われています)などが言われています。

札幌市東区 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック院長 安部裕介

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