豆知識

舌下免疫療法のお話

■舌下免疫療法とは

 

舌下免疫療法とは主にアレルギー性鼻炎の方に行う治療法です。

アレルギーによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状が出た場合は、症状を抑えるお薬を服用しますが、舌下免疫療法は根本的にその人が持つアレルギー体質を改善させる治療法となります。

 

具体的には対象のアレルゲン(アレルギー反応が起こる原因物質のこと)が含まれた錠剤を舌の下に投与し、約1分間口の中で馴染ませてから飲み込むことで、体の中で毎日少しずつアレルギーの免疫を作っていく治療法です。

舌下免疫療法の対象は、季節性のアレルギーであるスギ花粉症と通年で苦しい方も多いダニアレルギーの2種類です。

 

当院がある北海道で最も飛散量が多いのはシラカンバ花粉と言われておりますが、ごく少量ですが、札幌でもスギ花粉が飛散しており、函館地区ではスギ花粉症で毎年辛い思いをしている方も少なくありません。

一方でダニアレルギーは、地域性はなく、季節を問わず年中アレルギー性鼻炎を発症する可能性があります。

 

舌下免疫療法の開始時期は、花粉症のある方は、その飛散時期を避けたほうがいいですが、ダニアレルギーは、基本的には1年中いつでも治療を開始することができます。

スギ花粉症も、飛散時期に本州に頻回に行くことが無ければ、飛散がごくわずかの札幌では、基本的には1年中いつでも治療を開始することができます。(花粉飛散状況によっては治療を控えさせていただくケースもありますので、診察時に医師へご相談ください)

以下舌下免疫療法の詳細をご確認いただき、是非アレルギー性鼻炎で辛い方はご検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

■舌下免疫療法の種類

舌下免疫療法の対象となるアレルギーはスギ花粉症とダニアレルギーの2種類です。

どちらのアレルギーの改善を目指すのかによって処方する薬も変わってきます。

また、スギ花粉症とダニアレルギーの両方を改善したい方は、開始する時期を調整することで並行しての治療が可能となります。

 

 

【スギ花粉症のお薬:シダキュア】

・治療の流れ

治療を開始して最初の1週間は2000JAU錠を服用します。

その後特に問題がなければ、2週目以降は5000JAU錠を服用します。

※JAUは含まれているアレルゲンの量を表しています。

徐々にアレルゲンの濃度を高めていくことで身体に慣らしていきます。

 

・服用年数

錠剤は1日1回1錠を服用することを、3~5年続けていただきます。

必要に応じて1~2年追加で行う場合もあります。

 

 

【ダニアレルギーのお薬:ミティキュア】

・治療の流れ

治療を開始して最初の1週間は3300JAU錠を服用します。

その後2週目以降はより濃度の濃い10000JAU錠を服用していただきます。

 

 

・服用年数

シダキュア同様に1日1回1錠を服用します。

これを最低でも3~5年継続して行っていただきます。

必要に応じて1~2年追加で行う場合もあります。

 

【通院に関して】

毎日通院していただく必要はありません。

スギ花粉症でもダニアレルギーでも治療を開始した初期の数ヶ月は、2週間に1回ほど経過観察で通院していただく必要はありますが、その後症状が安定し、落ち着いてくれば1か月に1回通院していただければよくなります。

 

■舌下免疫療法の治療費と注意点

舌下免疫療法は保険適用の治療(子ども医療費助成の対象です)となりますので、助成の無い方の毎回かかる費用としては、3割負担で、診察代とお薬代を含めて、約1760~3310円位です(2022年の概算です。併用する治療薬の有無、通院頻度、助成の有無などによって変わります)。

舌下免疫療法を開始する上で特に守っていただきたいことはお薬の服用期間です。

安定すれば、月に1回は経過観察として診察を受けていただいた上で、3~5年は継続してお薬を服用していただく必要があります。

自己判断により途中で治療を中断してしまうケースがありますが、舌下免疫療法は途中でやめてしまうと、再度最初から治療を行わなければいけません。

途中でやめていたのにも関わらず、症状が酷くなってきたからといって自己判断で再開してしまうと副作用の危険性もありますので、医師に相談してください。

 

また、舌下免疫療法後2時間は入浴・運動など体に負担のかかることは控えるようにお願いしています。これも後述する副作用が関係しており、自宅で行うことができる治療法だからこそ決まりを守ることが大切となってきます。

 

 

■舌下免疫療法の副作用について

舌下免疫療法は少量ですがアレルゲンを体内に取り込むので、何かしらの副作用が起こる可能性があります。

よって、初回投与時は院内で行い、お薬を服用してから30分は体に異変が起こらないか確認するために待機していただくことになっています。

安定するまでは抗ヒスタミン剤などのアレルギー性鼻炎の内服薬を併用しながら行います。

 

起こる可能性のある副作用としては

・口内の腫れ

・喉や耳の痒み

・蕁麻疹

などが挙げられます。

もし上記のような症状が出た場合には、服用を中止し、医師に相談してください。

 

服用中、もしくは服用後に息切れ、動悸が激しくなったり、意識が朦朧としてきた場合などは迷わずに救急車を呼んでください。

※重い副作用がでることは極めて稀であり、基本的には安全な治療方法です。

 

■舌下免疫療法Q&A

・舌下免疫療法は誰でもはじめられますか?

原則として5歳以上の方からなら始めることができますが、お子さまが始める場合には服用にあたり様々な注意点を守っていただくことが必要になりますので、親御さんの協力が大切になってきます。

また、重い気管支喘息や癌、その他免疫系の病気がある方は舌下免疫療法を始めることができません。

 

・希望をすればすぐに始めることができますか?

舌下免疫療法を始めるためには採血によるアレルギー検査を事前に行う必要があります。

検査によりスギ花粉またはダニアレルギーの陽性反応が出た場合、開始日を決めて治療を開始していきます。

 

・薬を服用後にご飯などを食べても大丈夫ですか?

薬を服用してから5分間は飲食を控えていただきます。時間が経過した後、体に異変が起きなければ、飲食をしても構いません。ただし、飲酒をする場合は薬を服用後2時間は時間をあけるようにしてください。

 

監修 あべ耳鼻咽喉科アレルギー科クリニック 院長 安部 裕介

 

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